つなぐ-株式会社フジクラ

正面玄関に足を踏み入れると、いきなり優美な曲線を描く天井と壁とが訪問者を出迎える。
向かって左手には白い大理石の受付、正面には可動式のウェルカムボードが置かれ、
右手は湾曲したアルミニウムの壁。
ひだのように連なる壁のラインが、さながら永い歳月を積み重ねた地層を思わせる。

東京・中央区木場1丁目にある「株式会社フジクラ」の本社、1階エントランスホールは、
来客のためのショールーム機能を持つ。

ここには、同社の創業以来百二十余年の歴史が巧みにビジュアライズされている。

同ショールームのデザイン設計を手がけた建築デザイナー・西脇一郎は、
「フジクラ」の“核”をどこに置き、いかに表現すべきか、
コンセプトの策定に数ヶ月をかけてじっくり取り組んだ。

明治十八年(1885年)同社に「第一の創業」をもたらし、戦後の「第二の創業」を支え、
そして「第三の創業」を迎えた今なお主力商材である「電線」。

西脇は、フジクラの工場に幾度も足を運び、電線や高圧線、光ファイバーケーブルや
IC回路などの製造現場をつぶさに見て回った。
そして、同社の理念を具象化して生まれたのが「つなぐ」のデザインコンセプトだ。

人と人、場所と場所、ツールとツールをつなぐ。
あるいは過去と現在をつなぎ、現在と未来をつなぐ。

それは、同社が創業以来守り続けてきた理念であり、
西脇がその眼で見た同社の事業の根幹であった。

西脇は、ショールームの中央に“フジクラの魂”を配置した。
百二十余年前、創業者が入手した組み紐製造機械の同型機だ。
ここを中心に、光ファイバーをイメージした半円状の白い紐製のブラインドをあしらい、
同心円状に5つの接客スペースを設置。

ケーブルの断面図をイメージしたデザインは、西脇の提案によるものだ。
そして、ウェーブしたアルミ壁沿いには、
フジクラの過去から現在に至るさまざまな資料や製品が展示されている。

その終着点には“何もない”展示スペースが置かれ、同社を無限の未来へとつないでいる。

フジクラの誕生を象徴する組み紐製造機械。ここから電線製造への道が拓かれた。

エントランスから向かって左手は創業当初の記録。百余年の歴史の中には、近年になって発見されたものも含まれる。

壁際に並んだケースはフジクラが世に送り出した製品群。張り出した壁面のRは、まるで大樹に刻まれた年輪のようだ。

エントランスから向かって右手は「第三の創業」となる21世紀以降の製品。材質は変わっても“つなぐ”本質は不変。

エントランスホールとつながっている小ホールには、フジクラの現在の姿が製品と映像とで展開されている。

何もない空白のケースが象徴するものは、限りない可能性を秘めたフジクラの未来。

撮影協力=株式会社フジクラ
インテリアデザイン=株式会社西脇一郎デザイン事務所
写真/デザイン=川端 智幸