ベストセラーになった著書『千円札は拾うな。』の中で
熱烈な上昇志向を打ち出した安田社長は、
近著『下を向いて生きよう。』では
一転"足元の幸せ"の大切さを訴えている。
この極端なまでの落差について
「もちろん、意図的に狙ったものです」と安田社長は
いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「たとえば、当社の商品のうち、新卒採用コンサルを
行う際には、お客様に『育たない人は結局育ちません』
と明言します。一方、社員研修も扱っていますが、
こちらでは『必ず戦力化できるはずです』と
強調しています」
これを"矛盾"と感じる人もいるだろう。
だが、安田社長の考えは違う。
「採用も大切、研修も大切です。しかし"どちらも大切"と
当たり前のことを言っても、相手には伝わりません。
そこで、採用時には"素材がすべて"と説き、
研修時には"誰にでも能力がある"と説きます。
著書に関してもそれと同じ。
極端な言い方をして初めて相手に伝わるメッセージもあります」
ワイキューブ流、あるいは安田佳生流の面目躍如といったところか。
そんな安田社長に、経営者にとって必要な能力とは何かについて質問してみた。
「シナリオを書くことと、実行すること」??安田社長の回答は明瞭である。
"シナリオを書く"とは戦略立案能力、あるいは経営企画能力。
利益を上げるための設計図を引き、仕組みを構築する能力だ。
"実行する"とはシナリオに従って組織を動かす能力、トップマネジメントのリーダーシップを指す。
一般に、中小企業では前者に、大企業では後者に悩みを抱える経営者が多いようだと安田社長は分析する。
従来の中小企業では、シナリオ作成から実行まで
社長が全部一人でやっている会社が大半であったが、
「今後は、社員一人ひとりが自ら考え、判断していく組織づくりが求められる」
というのが安田社長の見解である。
「自律的な組織というものは、経営側から見ると、
思ったように人を動かすのが難しいというジレンマもあります。
しかし、これからの中小企業はそうでなければ生き残れない。
業務の効率化には限界がありますし、
社員の給料もこれ以上削減できませんからね」
こうした組織づくりのために安田社長が心がけていることは
「社員の考える力を削がないこと」だという。
「初めからできる人はいませんが、やらせてみなければ、
人は絶対にできるようになりません。失敗してもいいから、
まず自分で考えて、やらせてみる。
その経験で社員が成長すると思えば、
価値のある投資ではないでしょうか」
社員を成長させるのが企業としてのミッションであるなら、自らを成長させることは人生のミッションである、
と安田社長は言う。
「人は何のために生きているのか。『死なないため』に生きるのではないはずです。
なりたい自分、好きな自分を目指して成長していくことが、その人の"人生のミッション"だと思います」