「コイヌマさん、なんで株って買うと下がるんですかね?」
最近株式投資を始めたという女性ライターと打ち合わせをしていると、彼女がこうつぶやいた。
その瞬間、私の中でずーっと疑問だったことが瞬時に氷解した気がした。
それは……(オレだけじゃなかったんだ!)という気付きである。
社会人になってしばらくしてからはじめた株式投資で、ずーっと悩んでいたことは
(私が買ったとたんに株が下がる)ということ。
自分にはまったく株式投資の才能はないのだ。
そう思いながら、気が付けばズルズルと株の泥沼にはまってはあがき、あがいては深みにはまる繰り返し。
ITバブル崩壊の時は、50万円で買ったアスキー株が1万円で強制処分されたっけ……(遠い目)。
でも、同じ思いをしている人は僕だけじゃなかった。
そこにはきっと理由があるはず。
子供に「株式投資はするな」と家訓を残す前に、「買うと下がる」法則を解き明かしてみたい。
2006年1月15日。
浅草のおでん屋台で、僕は女性ライターとお忍びで飲んでいた(などと訳あり風に書いたら、本人に刺されそうだ)。
その席で「浅草の顔」という77歳の日本料理の職人さんと同席し、多くの人生訓を聞かせてもらった。
少年時代に東北から家出してきて赤坂の料亭で修行し、やがて浅草で腕をふるった熟練で、
今は浅草界隈のよき指導者だそうな。
職人としての心意気を語りながら、酒やおでんをおごりまくる。
彼女が「そんな悪いからいいです」と遠慮すれば、
「年をとったら若いモンにおごってやらなきゃいけねえ。それが嬉しいんだ!
おい、おやじ、オレの金でここに酒を、あそこにも酒を。グラスを空けるなよ。
なあ、おねーさんも何かのときには年下におごってやれる女性になれよ」なんて言う。
そこで僕は、神の託宣を聞くことになる。なぜかホリエモンの話になり、おじさんはこう言ったのだ。
「ホリエモンね、あれはしっぽさえ押さえられればすぐ捕まるよ。
国家予算にも値するようなカネをあんな若者が動かせるわけがない、必ず大物の黒幕がいるはずだ。
彼が捕まれば芋づる式にいろいろ出てくるだろうね。そうなるのも遠い将来の話ではないな。
捜査の手は入っているんじゃないか」
ライブドア事件まであと2日のことであった。((C)「あの時歴史が動いた」)
当時僕はライブドア1株貯金というのを実践していた。当時のライブドアの株価が700円前後。
1株単位から買える。それでもって松井証券に口座を開くと、1日約定10万円まで手数料無料。
これを組み合わせることで、1日1株、ライブドア株を手数料無料で買っていたのだ。
株の500円玉貯金といってもいいだろう。
神の声を聴いた私はどうしたか?
何もしなかったのである(泣き)。
1月18日朝、ライブドア株には2億株の売り注文(買い注文は20万株)が殺到した。
この事件を契機に日本株はピークアウトし、今に至っていると私は確信している。
株価は何で上がったり下がったりするのか?
いろいろ考えた結論は、ものすごく簡単なことで、やっぱり需給関係である。
買いたい人が多ければ上がるし、買いたい人が少なければ下がる。ものすごく単純なゲームだ。
単純であるからこそ、面白く奥が深い。
株価が上がり下がりしていると、それぞれの株価でまんべんなく株が買われているように思いがちだ。
「ああ、この時買っていれば」「あの時に売っていれば」そう思ってしまうのもムリはない。
でも現実は「この時に買う」ことも「あの時に売る」こともできないのだ。
株価が上がっているということは、多くの人が買っているということである。
その人たちは上がった株価で買っているわけで、多くの人が高値で買っていることになる。
逆に株価が下がっている場面では、買っている人が少ないから下がる。
高値で買っている人に比べれば、安値で買っている人は圧倒的に少ない。
だから「買ったら下がる」と思う投資家が多いのは確率的に正しいのだ
ライブドア事件と合わせて日本株下落の契機となった事件に「ブルドックソース事件」がある。
2007年6月にブルドックソースをアメリカの投資ファンド、スティール・パートナーズが買収しようとした事件だ。
ブルドックソース側は、スティールによる経営権取得が企業価値を損ない、
株主の利益も損なうものであることを理由に、買収防衛策を高じた。
その内容は、ブルドックが全株主に1株につき3個の新株予約権を発行。
スティールについては株式相当額の金銭を交付し、
スティールによる持ち株比率を4分の1に引き下げようとしたもの。
スティールは新株予約権の行使の差止めなどを求めたが、
8月7日に最高裁はブルドックソース側の買収防衛策を適法と認めた。
スティールに支払われた金額約5億円は、ほぼ1年分の営業利益に匹敵する。
その判断が株主にとって得だったかどうかも疑問だが、日本株全体がこの事件で失ったものは大きい。
日本の会社は株主のものではないと、世界に証明してしまったことだ。
売買高の6割強を占める外国人投資家に見限られた日経平均は、この日の1万7000円台からピークアウトした。
株の悲惨な話ばかり書いて、こんなことを言うのも恐縮だが、やはりがんばってほしいのは新興市場。
為替に左右されない内需間連で、成長性が高い企業を探すと、やはり新興市場に行きつく。
マザーズを例にとると、ライブドア事件直前の高値2799ポイントから2年ちょっとの
今年3月17日に568ポイントまで下落した。
下落率は実に80%である。
内容の確かな企業を丁寧に拾っていけば、数年後には花開くのでは?
あー、こうやって泥沼にはまっていくんだな……(反省)。
■小井沼玉樹(こいぬま・たまき)
1960年3月21日生まれ。ファイナンシャル・プランナー。投資系の記事やコンテンツを多く手がける。
著書に「めざせ!投稿生活」( 成美文庫)、共著に「2007年まで株で稼げます!」(中経出版)、「「韓国株」は2008年までに3倍続出」など。
ブログ(http://shinkoukokutoushi.seesaa.net/)