六本木を唸らせる博多の味

来店客がゆったりと掛けられるように、カウンター席には充分なスペースを空けて10 脚余りの片袖ストゥールが並べられている。
大人数が入れるようストゥールの数を増やすより、一人ひとりの保有空間を重視した設計だ


六本木交差点を、首都高沿いに西へ。

道路を挟んだ向かい側には、アマンドや麻布警察署など
昔ながらの街並みの中に、MORIタワーの偉容が天を衝く。

背後を振り向けば、悠然とそびえるミッドタウンタワー。
そんな、活気と喧騒に満ちた六本木の地に、
博多仕込みの店主がこだわりの店を構えている。


半地階への階段を降り、白木の格子戸をくぐると、
そこには、最高級の檜を用いた白木のカウンターを中心に、
柔らかな光に満ちた居心地の良い空間が広がっている。

カウンターとテーブル席を合わせて10数人も入れば満席の
こぢんまりとした店内だが、
その調度や造作はシンプルでありながら
考え抜かれたデザインがあふれている。

たとえば、楕円形にくりぬいた天井からの間接照明。
半地階であることを利用して、地上の光を呼び込む明かり取りの孔。

あるいは、従業員と来店客のそれぞれの動きを読み込んだ動線設計。
また、ストゥールに座った来店客の目線に合わせたカウンターの床高……。

「鮨さか井」は、九州・博多で16年間修業を積んだ店主が、
東京で初めて開いた店だ。

開店に当たり、良いインテリアデザイナーを知らないかと
オーナーに問われたとき、店主の脳裏に浮かんだのは、
博多時代に何度か店を訪ねてくれた西脇一郎だったという。

雑誌等で西脇の作品を見ていたこともあって、
店主はオーナーと相談の上、西脇にデザインを依頼することにした。

打ち合わせを交えるなか、しばしば意見が食い違うこともあったが、
西脇の説明を聞き、また実物を見ていくうちに、
自然に納得していったという。

たとえば、カウンター席のストゥールは左側だけに袖がある。

これは、椅子のデザインを決定するミーティングで
「ここは任せてほしい」と西脇が胸を叩いた自信作だ。


長時間座っていることの多い来店客が快適に過ごせるよう、クッションや材質にも細やかな配慮がなされ、
来店客からも好評を博している。
デザインにふさわしい新鮮な食材を並べ、今宵も宴の幕が開く。

カウンターに使用されている白木は、
店主が原木から選んだという国産檜の最高級品。
まさにこだわりの逸品だが、残念ながら建物の入口が狭いために
一枚板の形で搬入できず、その点だけが心残りだとか。

鮨だけでなく魚や野菜料理も饗するため、
カウンターの奥行きを広く取り、
両端にはその日仕入れたばかりの新鮮な食材を収める
ショーケースが据え付けられている

ストゥールに着いた来店客に圧迫感を感じさせないように、
カウンター内の床は一段低くなっている

西脇一郎デザイン事務所で制作された立体模型。
設計途上のため、完成店舗との差異を比べると興味深い

天井に穿たれた楕円形の孔は、
間接照明の柔らかい光源であると同時に、
見る者に開放感を感じさせる

突き当たりの壁は四角く区切られ、間接照明となる。
オーナーのコレクションのモノトーンの絵画と玉砂利が
落ち着いた雰囲気を演出

撮影協力 = 鮨さか井 TEL 03-5771-5655
インテリアデザイン = 株式会社 西脇一郎デザイン事務所
施工 = 株式会社 アクティブ
写真/デザイン = 川端智幸

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