ベイエリアから世界を望む

建物の形状に合わせて最大限の面積を確保できるようにレイアウトされている執務スペース。
広い空間を、さらにひろびろと使うためのさまざまな工夫が施されている

かすかな潮の香りが鼻腔をくすぐる。

窓べりの通風孔から、東京ベイエリアの風がひろびろとした
執務スペースを吹き抜けていく。

窓面のRに合わせて扇状にレイアウトされたオフィスには、
充分なゆとりをもって点々と直径2メートル余の 円卓が配置されている。

木目調の断面がぬくもりを感じさせる円卓は、
このオフィスのためだけに造られた
オリジナルのデザインであるという。

一卓につき4人分のチェアが置かれ、
フリーアドレス制で運用されるこの円卓は、
ここで働くクリエイターたちの創造力を最大限に高める
ワークステーションとなっている。

東京・港区にある「イー・キャッシュ株式会社」が現在のオフィスに
移転したのは2007年10月のこと。

移転の前後で最もドラスティックに変わったのは、
同社のビジネスの中核を担うクリエイター集団の就労環境である。
以前のオフィスでは横並びのデスクでひたすらPCに向かっていたが、そうした事務的な雰囲気のなかでは、
思うがまま自由に発想の翼を広げることは難しい。

そこで"アイディアが生まれやすい空間づくり"をテーマに、同社代表自らオフィスデザインに取り組んだ。

理想とするオフィスのイメージにさまざまな条件を加味した上で、オフィス設計の基本的構想を叩き台にまとめ、
デザイン会社数社でコンペを開いたという。

このとき、インテリアデザイナー・辻中浩佑はただひとり、
斬新な発想とバランスの取れた経営感覚が両立するデザインを提案。

そこには、同社のデザインコンセプトである「カフェのようなオフィス」を実現するための
さまざまな工夫が盛り込まれていた。

たとえば、円卓の真上に天井から吊り下げられた照明や、全体的に設置したダウンライトに。

また、レインボーブリッジを一望できる窓枠の木目模様に。
あるいは、執務スペースの左右を囲う半透明の板硝子壁に……。

同社の構想と辻中のディティールが実現した"海を望むカフェ"は、
クリエイターからも外来者からも高い評価を得ている。

東京湾に向かって天井から足元まで大きく視界が開けた窓際スペース。窓枠の木目模様には、光の乱反射を防ぎ、見る者の眼を和ませる効果も

天井は、以前からあった四角いグリッド照明に加えて、各円卓の真上に円筒形の間接照明を設置した一種のタスク/アンビエント方式が採用されている

天井は、以前からあった四角いグリッド照明に加えて、各円卓の真上に円筒形の間接照明を設置した一種のタスク/アンビエント方式が採用されている

窓際に置かれたテーブルセットにノートPC を持ち込み、海を眺めながらマイペースで仕事をすることも可能だ

撮影協力 = イー・キャッシュ株式会社
インテリアデザイン = 株式会社 ワックス・トラックス
写真/デザイン = 川端智幸

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