"買った株が下がり、売った株が上がる"理由

 今回、ひょんなことから高名な株の専門家のA 氏と話す機会を得た。
30分ほど伺ったお話で私がこの連載の第1回で取り上げたこのテーマも、
新たな視点で解説してくれた。
 
 「よく一般投資家が、買った株は下がる、売った株は上がるって言いますが、当たり前。
買えているということは、株価が買値まで下がっているから買えているわけで、
そのあと下がるのは当たり前。
売る時の売値まで上がっているから売れているのであって、
その後にもっと上がるのは当然なんです。
だから、そのことを嘆くのではなく、自分の売買は正しかったと喜んでいいんです!」

 おー、なんとわかりやすい! しかも、「それでいいんですよ」という、
個人投資家にとって勇気の出るような励ましのアドバイス付き。いまこそ、このペー
ジを読んでくださっている一般投資家に代わり、レクチャーを受けなくては! 

そしてこの誌面で伝えなくては! ということでA氏に、株で儲かっていないと
嘆く一般投資家はどうすれば良いのか、じっくりと教えを受けてきました。

「あの時買っていれば」は限度なき後悔への悪魔の囁き

 私が転勤先の京都の自宅で「韓国株」の本の原稿を書いていた時だ。2005年夏。忘れもしない、小泉首相( 当時)が郵政解散で総選挙圧勝。選挙が決まったとたんに、それまでボックス圏で長く低迷していた日本株が、一気に上昇トレンドに乗った時期だ。
 原稿の合間に、持ち株のチェックをしていた私。パソコンの画面を見ながら、思わず思い切り「フニャーッ」と情けなく顔をしかめてしまった。それを偶然に見つけた私の妻は、珍しく「原稿大変なの?」と優しい声をかけてくれた。
 ここだけの話、私の妻は夫に対してはスパルタで、普段あまり甘やかされることはない。その妻が思わず心配するくらい、悲しげに見えたのだろう。でも、その時の私には、妻にその顔の真相を言えなかった。
 
 実はその時私は株価のチェックをしていたのだ。4000円台で買ったソフトバンクを6000円まで上がったから喜んで売ったら、売ったとたんに上げ足を早め、あれよあれよという間に8000円を超えていたのだ。私の「フニャーッ」の原因は、売った株が上がった後悔からだった。
 
買った株が下がるのは確かに悲しい。でも、前回書いたようにそのことに人は慣れる。「あの時買わないでおけば」とは思っても、とりあえず損が目に見えているから冷静に対処できる。ころが「あの時買っていれば」という後悔には、実は歯止めがないのだ。
「6000円で100株買い増していれば20万。200株なら40万。いや、思い切って1000株信用で買ってたら200万円儲かったじゃん! 買おうと思えば買えたよなー。あー、なんで売っちゃったんだろー……フニャーッ」
 てなことを、パソコンを前に後悔していたのだ。自分だって20万近くは利食いしていたのにも関わらずである。
 そうして2005年後半、日本株は株価プチバブル状況を呈する。居酒屋で「株なんかカンタンだよ!」と言い放つ一般投資家が増えた頃、ライブドアショックの芽は育っていたのだ。

情報が多すぎるから迷うし、間違えるんです!

A氏はまず「専門家の言っていることを疑え」と強調する。
「日経平均とかN Yダウとか言うけど、そのことをちゃんと説明できる
専門家なんて、実はあまりいないんです」

 いきなり刺激的なパンチだ。ちなみにNYダウはNYの代表的な30銘柄の指数で、
それぞれの銘柄の平均の株価は約40ドル。
その全銘柄が仮に1ドルずつ下がったとすると、NYダウは250ドル下がることになるとか。
250ドルといえば暴落という印象だが、1株1ドルの下落にしか過ぎないと思うと、
まったくイメージが変わってくる。

 最近評論家が個別株から離れて個人投資家に投資信託ばかり進める風潮も
A氏は切って捨てる。
「投資信託が安全確実だなんて大まちがい。日本にプロの機関投資家なんていません。
だってそうでしょう? みんなサラリーマンなんだから」

 投資信託を運用する担当者は、自分のお金を動かしているわけではない。
利益を出したら、多少は出世するかもしれないけど、給料が画期的に増えるわけではない。
ならば冒険せずに、なるべく損失を出さないように、と保守的な運用になることは容易に予想できる。
要するに「言い訳のできる負けゲーム」を確実に作っているという。

スコミや評論家の論調も鵜呑みにしてはならないそうだ。
「下がった時ばかり”暴落だ”とか騒ぐでしょう。評論家も”危ない”とか。でも、
一日で企業の中身が変わるかといえば、何も変わらないんです」
 暴落を伝えるニュースで必ず流れる映像が、東京駅前の証券会社の
株価ボードに見入る一般投資家の姿。
 A氏に言わせると、あの映像が流れたら、大体そこが底値に。逆に評論家が
楽観的なことばかり言うようになる
と、そこが天井になる。
 マーケットのそういう誤解と錯覚が、一般投資家を惑わしているのだ。
 A氏の話に目からうろこが落ちまくりの私は「この人の本を作らねば!」と
心に誓っていました。(乞うご期待!)

自分の金で勝負する個人投資家こそプロなのだ!

 A氏の言葉で一番印象的だったのは、「一般投資家こそ、本当の投資のプロなんです。
だって、自分のお金を使って勝負しているんだから」という言葉。
 確かに、どんな理屈をつけようが、損をした痛みは自分で受けとめるしかない。
評論家や機関投資家は、後からもっともらしい理屈をつけて、自分の意見や見方が、
その時点では間違っていなかったことを講釈できるが、
損をした投資家がそう言ったところで、損失が戻ってくるわけではない。

評論家の言うことにいちいち反応して、結果的には高値で買って底値で売って、
押し目だと思って買ったらダーッと下がる。
そんな思いばっかりじゃありませんか皆さん? ……ていうかオレ(泣)!

 相場を毎日見ていると、ムダに悩むことが多い。上がっては焦り、
下がっては恐れ、キリがない。どんどんわからなくなってきて、
投資スタンスがブレまくる。そうならないために、自分なりの基準を持つことが大切なのだと
A氏は強調する。

 その基準のひとつを教えてもらったので、最後に紹介します。

A氏の金言

 見ておくべきは移動平均線と、A氏は強調する。
移動平均線とは過去何日かのその銘柄の平均株価を繋いだ線のこと。
25日移動平均線なら、それぞれの日から過去25日間の平均株価を出し、
それを繋いだ線ということになる。
この線の傾きによって、株価の下降・上昇トレンドがわかったり、
日数を変えた線を複数見ることで、相場の転換点がわかる便利な指標なのだ。

 中でも大きな流れを見るために、ぜひ200日移動平均線を意識するべきと言う。
日経平均のブレは200日移動平均線から上下20 %。
この水準に近づいたら底値、あるいは天井と判断できるわけだ。

■マジメな株話

一般投資家は長期投資をするべきだ、と言う論調が評論家から常に語られるが、
それは本当にそうなのだろうか? 
私がいつも思うのは「長期投資」という言葉の意味を
間違えているのではないかということ。
 つまり、長期投資というと「長く持っていれば結果的に運用成績が良くなる」と
捕らえがちだが、そうではないのだ。
だって、バブル崩壊以降、株を長期投資していたら、
大体のケースで損をしているはずだ。塩漬け株が10年経っても
塩漬けのままの人だって、いっぱいいるでしょう?(オレ?)
 ボクが考える長期投資の考え方は「長く保有していれば、
利食えるチャンスが出てくることがありますよ」という意味での長期投資だ。
 釣りにたとえると、いつアタリが来るかわからない。
しかしアタリが来るまでじっくり待てば、釣り上げるチャンスはあるのだ。
 どんな銘柄でも、年に何回か、上昇する時がある。
その時に利食いのチャンスが生まれるから、上がる時までじっくり待て、
という意味が、本当の長期投資だと思う。
時間を味方にして、賢い株式投資をできたらいいのだけれど、それが難しいのだが。

プロフィール

■小井沼玉樹(こいぬま・たまき)
1960年3月21日生まれ。ファイナンシャル・プランナー。投資系の記事やコンテンツを多く手がける。
 
 著書に「めざせ!投稿生活」( 成美文庫)、共著に「2007年まで株で稼げます!」(中経出版)、「「韓国株」は2008年までに3倍続出」など。ブログ

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