西脇一郎の空間デザイン進化論  第二回 美的なるわが意匠

お蔭様で、戎橋筋で一番目立つお店ができました。

株式会社玉屋 代表取締役社長
竹田篤史氏

[竹田] 戎橋筋というところは「意味もなく歩く街」なんです。人通りはメチャ多いけど、その中に服を買ってくれるお客様は何人いるか? そう考えると、人の目を引く何かがないとダメなんですよ。

[西脇] その意味では、目立つことが何より重要なんですね。

[竹田] はい。お蔭様で、戎橋筋で一番目立つお店ができたと思います。

[西脇] そういう風に言っていただけると、デザイナー冥利に尽きますね(笑)。

男性の我々では気づかない目からウロコの発見とは

[西脇] 「Heartdance」といえばハートがモチーフになっていますが、あれを最初に展開したのが「MISCH MASCH」でしたね。僕が竹田社長と一緒にやらせていただいたお仕事としては、神戸の「winwin」の次が、大阪・梅田のHEP FIVEという商業施設内にある「MISCH MASCH」でした。

[竹田] 既存店舗のリニューアル案件ですが「MISCH MASCH」の第一号店でした。西脇先生の好きなハートのモチーフでブランドの方向性がカッチリ決まりましたね。

[西脇] あのときは予算の関係で、床は大理石模様のビニールタイルを使用する予定でしたが、土壇場でひっくり返りました。

[竹田] MDの女性のひと言でね。喫茶店で打ち合わせしているときに、突然彼女が「専務(竹田社長のこと)、申し訳ありませんが、これじゃ私、売れる自信がありません」なんてことを言い出して……。

[西脇] お店の場所はHEP FIVEのエスカレーターの正面で、普通だったら絶対売れるはずだと思ったんですが。

[竹田] そう。そこがつまりは、我々が男だから、ということになるんでしょうね。目からウロコが落ちましたよ。正解は……。

[西脇] 「ハイヒールの音」でしたね。見た目は変わらなくても、大理石とビニールタイルではハイヒールの足音の響き方がまったく違う。僕もいい勉強になりましたよ。

[竹田] 西脇先生とのお仕事は、こういう発見があるから面白い。でも、ときにはこれ、やりすぎなんじゃないか、なんて思うこともありましたけどね(笑)。

[西脇] 結局、竹田社長の許可を得て床を本物の大理石に換えました。結果的にはこれが大正解でしたね。

[竹田] 爆発的なヒットで、試着が20分待ちという盛況でしたが、フィッティングルームの入り口にピンクのベルベットカーテンをあしらってあって、試着する間、彼氏を待たせておくのに具合がいいと評判です。

喜んでいただけるとデザイナー冥利に尽きますね。

究極の「MISCH MASCH」を創ろうと決意

[西脇] 「MISCH MASCH」は玉屋さんを代表するブランドの一つですが、中でも忘れられないのはやはり「MISCH MASCH」心斎橋路面店ということになるでしょうか。

[竹田] あれはね、「MISCH MASCH」の旗艦店、いわば究極の「MISCH MASCH」を創ろうということで、担当したMDもメッチャ気合いが入ってました。それはいいんですが、気合いが入りすぎて予算をオーバーしてしまって。

[西脇] 「MISCH MASCH」はハートのモチーフがブランドイメージになっていますが、心斎橋店では、新しいハートにプラスアルファのイメージに挑戦してみました。ショーケースの金属製のハートのオブジェも、ひときわ大きなものを採用しています。それと、(株)アダルさんにお願いしているハート型スツールも、心斎橋店のものはピンク色の非常に特徴的なフォルムのデザインになっています。

[竹田] ただね、私は心斎橋店のシャンデリアについては聴いてなかったんですよ。

[西脇] ハート型のシャンデリアは「MISCH MASCH」の象徴ですから、心斎橋店では特に巨大なシャンデリアを使わせていただきました。ハートの周囲に(株)脇田さんのクリスタルチェーンをたっぷりとあしらったシャンデリアです。ランニングコストを無視してでもアピールできるように、というお話を伺っていたもので……。

[竹田] いえ、それはいいんですわ。というよりもね、シャンデリアの数が多すぎるんですよ(笑)。だって全部で12個ですよ!

[西脇] あれ、竹田社長はご存知じゃなかったんですか?(笑)

[竹田] ブランディングという意味で、店舗のイメージを変えるつもりはありませんでした。予算がオーバーしたということもあって、MDから途中何度か報告は受けましたが、基本的には任せてあったのでデザインには口を出していません。だから、私はオープンするまでシャンデリアの数を知らなかったんです。それで、いざオープンという日に行ってみたら、ものすごいコトになってましたから……。あれ以来、新店舗の話があると、MDに必ず確認するようにしています。「シャンデリアの数はナンボや?」って(爆笑)。

春の出店ラッシュに続き秋にも新たな出店計画

[西脇] 話は尽きませんが、そろそろ今後のお仕事について……。今年は春に全国17店舗という新規出店ラッシュがありましたが、秋にもいろいろ新しい出店計画を予定されていますね。

[竹田] はい。現在玉屋では9つのブランドを展開していますが、11月30日オープン予定の「Leaf Garden」は、既存の「DEARFLURA」「Ritta&Emma」「Silent Lumy」の3ブランドから成る複合ショップですが、ここから新しいブランドとして立ち上げる可能性もあります。また、西脇先生のお世話になります。

[西脇] はい、喜んで(笑)。

[竹田] 西脇先生のブランディングに期待しています。ただし先生、くれぐれもシャンデリアは1個でお願いしますよ(笑)。

[西脇] ありがとうございました。これからもお客様に楽しんでいただける素敵なお店を一緒に創っていきましょう。

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対談を終えてひとこと

社長に就任されてからさらにお忙しくなられ、
今回の対談で久しぶりにお会いさせていただきました。

相変わらず笑いが絶えず豪快な方で、
社長になられてさらにパワフルになられた感じがしました。

玉屋様のブランドはそのような社長のもと、
分かりやすく存在感のあるものに創り上げられています。

ブランド毎にイメージの伝わるモチーフやCIカラーを設定し、お客様の目線にて築き上げることを心がけています。

竹田社長とは同世代なので、これからも共に刺激をキャッチボールしながら、
タッチダウンを繰り返して行きたいものですね。
竹田社長、これからも名クォーターバックよろしくお願いいたします。