9月15日の夜半、黒霧島をロックで飲みながら、僕は『NHKのど自慢』の録画をぼーっと見ていた。
僕は、自分を慰めたい時によくそうする。
今日、リーマン・ブラザーズ破綻のニュースがテレビで繰り返し報じられた。
太陽の周りの順に津波が地球全土を席巻していくかのように、世界の株は暴落している。
不幸にも休日だった日本市場は、ほぼ確実な明日の暴落を想像しながら、何も手を下せない。
こんな夜は「のど自慢」でも見るしかないではないか。
地方の町を終の住み処と決めて、そこで一生懸命生きる日本人を見ていると、なぜかうらやましくなる。
彼らには「愛してるよ!」と笑って言える家族がいて、横断幕を作って応援してくれる友人がいる。
人生にこれ以外何が必要なのだろう?
欲にまみれた僕は自分が惨めに見えてきて、金なんかどうでもいいじゃないか、という気分に浸っていく。
『天城越え』を歌った出場者がいた。
「♪あなた殺していいですか〜」
このフレイズに思わず「うわーっ!」と叫んでしまった。
『天城越え』の歌詞に、先日ある人に言われた言葉がフラッシュバックした。
半月ほど前、僕が預かって運用していたお金を損させてしまった女性が、前回のこの頁を読んでしまったのだ。
「法律が許せば殺していい?」
そう言った。般若の顔って、人を心底恨んだ時の人間の顔なんだと分かった。
僕が今、著書の出版に関わっている社長はこう言った。
「金もうけは神聖な行為だ。しかし、その結果生み出される金はウ○コだ!」
ウ○コは食べれば腹を壊す。お金も使い方を間違えれば人をダメにする。
知力を尽くして株式投資に全力を注ぐのは美しい行為だが、お金がほしいと思って株を買ったとたんに、
僕はウ○コを食べてしまったのだ。
僕は女性の歓心を買いたくて、できもしない運用を買って出て、欲に負けた。金が人を殺すのではない。
金という名の「ウ○コ」を食べてしまった人が死ぬだけのことなのだ。
天城越えのほかに最近もう一回、心の中で思わず叫んでしまったことがある。
仕事場の近くの安い中華屋で、北京オリンピックの野球を見ていた時だ。
日本のしょぼい攻撃にくさっていたところ、遅れて来たライターさんが「聞いてよ!」と話し始めた。
「さっき校了が終わったページで取材したレストランから電話が来て
『親会社が事再生法を申請したので、今日で閉店します』だって。差し替えで大変!
親会社ってアーバンなんだけど……」
「アーバン」と聞いて、一瞬周りの風景が止まった気がした。ライターの声が遠くに聞こえる。
テレビの音も聞こえない。
「アーバン、アーバン、アーバン……」
さっきのひと言がリフレインする。恥ずかしながら僕は、アーバンコーポレイションを500株だけ買っていた。
かつて2000円以上したアーバンの株価が200円割れまで下がっていた。今思えば下がりすぎだ。
これは倒産株価に近いと考えるべきなのだが、ついついいつもの山っ気を出してしまったのだ。
またも僕はウ○コを食べてしまった……。
僕がなぜ、アーバン株を買ってしまったか? かつて、アメリカの投資家にこういう伝説があると聞いたからだ。
株価が暴落した時に、全部の資金を100銘柄の株に投資した人がいた。確かにそのうちの4社は破綻した。
しかしその他の会社が復活し、その投資家は巨額の富を手に入れた。
「160円で500株、8万円がもしかしたら10倍になるかも!」
ちょっとした欲から、僕は破綻銘柄を買ってしまった。
噂によると、アーバンの社長は資金調達のため、持ち株を売っては会社に入れていたらしい。
自分の手元には一切残さず、会社に全額を入れ、それも及ばず破綻した。
そして社長は、おそらくインサイダーで罪に問われる可能性が高いのだという。やはりお金は人を滅ぼす。
リーマンの株価は15ドル台から一気に3ドル台まで下がったらしい。それは明らかに倒産株価だろう。
それにしてもあっという間にメリルをバンカメに売り、リーマンを破綻させてしまったアメリカ当局のスピードは速い。
これは悪夢の終わりの始まりになるのか?
9月16日、中国で6年ぶりの利下げが発表された。アメリカでも緊急利下げが取りざたされている。
夜明け前が一番暗いという。問題はいつが一番暗いか分からないことなのだが、
その中で放たれる経済政策は、今は焼け石に水のように見えるかもしれない。
しかし実は水面下で次のバブルの芽を育てているのかもしれない。
予想通り、翌日17日の日本市場は暴落した。でも、生き残っていさえすれば、いつか春は訪れる。
「のど自慢」では89歳のおばあちゃんが歌っている。しわがそのまま笑顔になったようで、幸せそうだ。
生きていれば「のど自慢」で歌えて、藤あや子と握手ができて
「ばあちゃんがんばれー!」って娘や孫に応援してもらえる。
1年後、今日のことは忘れている。そう信じて、明日もまた生きていこう!
潰れるか? 潰れないか?
企業に投資する時に、この見極めは大きな問題だ。
かつて、金融危機の2003年、みずほFGの株価は5万円台にまで落ち込んだ。
明らかに破綻を織り込んだ株価だったといっていい。その時に知人の証券外務員の人がこう言った。
「みずほが潰れると思う? 潰れないと思ったら買いでしょう」
その人はそれまでやられまくって、年収120万円まで落ち込んで、
妻の実家に借金しまくっても証券マンをやめなかった人。
ついにその時、銀行株で勝負して、みずほが100万円をつけた年には年収9000万円まで成り上がった。
ゼファーやアーバンコーポレイションの破綻に象徴されるように、今、不動産株はどん底だ。
しかし、不動産という業界がなくなることはない。
では、その「潰れるか潰れないか」の瀬戸際にいて、株価がバカ安で、
潰れないで生還できる銘柄を買えば、大きなリターンが得られるのではないか。
そう考えて買った株がある。長谷工コーポレーションとサンフロンティア不動産だ。
大手という安心感、新興の中での有望株を選んだつもりだ。
景気が悪くなればなるほど、東京の不動産が上がるという話もある。
地方の景気が悪くなれば、東京に仕事を探しに来てそこで部屋を借りるから、という理屈だ。
破綻したアーバンは広島拠点だった。
ギンザのオフィスなど、東京に強いサンフロンティア不動産の明日はどっちだ!?
■小井沼玉樹(こいぬま・たまき)
1960年3月21日生まれ。ファイナンシャル・プランナー。投資系の記事やコンテンツを多く手がける。
著書に「めざせ!投稿生活」( 成美文庫)、共著に「2007年まで株で稼げます!」(中経出版)、
「韓国株」は2008年までに3倍続出など。
ブログ
http://shinkoukokutoushi.seesaa.net/
http://shosekinikki.seesaa.net/